いちばん近くの橋から飛び降りてしまいそうなリンゴ・スター
P.S I Love You ( Lennon / McCartney )
THE BEATLESのファーストシングル “Love Me Do / P.S I Love You” のA面
THE BEATLESのファーストアルバム “PLEASE PLEASE ME” の9曲目
この曲は”Love Me Do“と同じ日にレコーディングされました。
ビートルズファンの方なら有名な話ですが、
デビュー曲”Love Me Do”のレコーディングでは、リンゴ・スターはドラムを叩かせてもらえませんでした。
プロデューサーのジョージ・マーティンがリンゴのドラムをあまり気に入ってなかったので、
レコーディング用に別のドラマー(アンディ・ホワイト)を用意します。
そしてジョージ・マーティンの決定で”Love Me Do“と”P.S I Love You“はそのドラマーに叩かせるのです。
(実際にはジョージ・マーティンはその日のレコーディングに遅れてくるので、そのことを当日ビートルズに告げたのはジョージ・マーティンの部下のロン・リチャーズという人です)
この日のことをリンゴはずっと根に持っていて、度々インタビューでこの話をしています。
ジョージ・マーティンも申し訳なかったとことある度に謝ってます。(お互い冗談まじりですが)
ジョージ・マーティンの部下、ロン・リチャーズはまずビートルズのマネージャーにドラムはリンゴじゃなくアンディ・ホワイトを起用することを告げ、
マネージャーからメンバーに伝えてもらいました。
するとメンバーがロン・リチャードのところへやって来ました。
このレコーディングの見学に来てたジェフ・エメリック(後のビートルズのエンジニア)はこの時のことをこう語っています。
リンゴはその物腰にぴったり合った、陰気な声で言った。なじみの顔を探して部屋を見まわし、哀しげな声で問いかける。
「ジョージはどこ?」
あわてたロンがせきばらいをして、リンゴに自己紹介をした。きまりの悪い沈黙をへて、彼は悪い報せを伝えた。
「ジョージはちょっと遅れるので、わたしがセッションをスタートさせることになったんだ。それと・・・」
ふたたび間があり、ふたたび見捨てられたような表情が浮かぶ。
「ジョージに伝えてくれといわれたんだが、今日はここにいるアンディを使う。 今回のセッション用に雇われたプロのドラマーだ。」
リンゴの表情はさらに暗くなった。いちばん近くの橋から飛び降りてしまいたい、とでも思っているような面持ちだ。
彼のことはなにひとつ知らなかったけど(ぼくらはまだ、ひとことも言葉を交わしていなかった)ぼくは同情を禁じ得なかった。
〜 ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実 〜 より
デビューシングルのレコーディングから完全に重たい雰囲気ですね。
こういうことは、せめてジョージ・マーティンの口から伝えて欲しいと思うのは日本人的な考え方なのでしょうか?
そんな経緯で”Love Me Do“と”P.S I Love You” のドラムはアンディ・ホワイトが叩くことになり、
リンゴは”Love Me Do“ではタンバリン、”P.S I Love You“ではマラカスを担当することになります。
ただ”P.S I Love You“ではドラムというドラムは入ってなくて、
アンディ・ホワイトはスネアのリムを鳴らしてるだけだと思います。
(ジェフ・エメリックは”最後の真実”の中でアンディはボンゴにまわったとしてますが、ボンゴの音はなってないよね?)
リンゴのマラカスもなかなか悪くないですよ 笑
でもきっと、この曲のリズムはアンディ・ホワイトが引っ張ったような気がします。
普段のビートルズのリズムよりもかっちりしてる気がするんで。
歌詞の内容は、
しばらく会えない彼女へ向けて送る手紙の最後に、
“P.S I Love You“と添えるというラブソングです。
もう曲のタイトル通り、そのまんまの歌詞です。
曲はなかなか面白くて、イントロなしのいきなりの歌い出しで、
Gから歌いはじめます。(キーは D or Bm です)
まあそれ自体は良くあることですが、この後普通なら
G A D と行くところを、
G C♯dim D と行ってます。
このC♯dimに劇的な効果はないのですが、
ひとひねり加えることで曲が広がります。
C♯dimには ♭シ の音が含まれていて、
この音がサビ終わりに出てくるB♭のコードともつながりを見せてると思います。
リードボーカルはポールで、ジョンは色んなコーラスをつけます。
ユニゾンで歌ったり、1オクターブ下になったり、単語だけ下ハモをつけたり、
相変わらず息ピッタリの2人で、見習いたいところです。
(0:25〜)
“ピーエス アイ ラビュー” の “ビューーー”って伸ばすところで、
B♭ C D というコード進行が出て来ます。
このコード進行はロックではなにかと良く使われる進行なので是非覚えておきましょう。
ビートルズではサージェントペーパーの”With A Little Help From My Frends“のラストで使われてます。
(ビリーシアーズを紹介する部分では、1曲目のGから2曲目のEへの転調に使われてます)
とまあこんな感じですね。
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