She Loves You

ポール「僕らはどんなルールにも絶対耳を貸さなかった」

The Beatles She Loves You (2009 Mono Remaster)


 

She Loves You ( Lennon / McCartney )
THE BEATLESの4枚目のシングル “She Loves You / I’ll Get You” のA面
THE BEATLESのコンピレ−ションアルバム”PAST MASTERS VOL.1″の4曲目

ビートルズの曲はどれも有名ですが、
その中でも初期ではかなり有名な曲ではないでしょうか。

前シングル”From Me To You”で新たなコード進行を発見し音楽的に成長したビートルズですが、
続くこの”She Loves You“ではさらなる進化を遂げます。

初期ビートルズの中で最も重要な曲の一つではないでしょうか。

歌詞(意訳)

彼女は君を愛してるよ
彼女は君を愛してるよ
そう、彼女は君を愛してる

君は彼女を失ってしまったって思ってるだろ?
実はね、昨日彼女と会ってきたんだ
彼女はまだ君のことを思ってて
君を愛してるってこと伝えて欲しいって言われたんだ
ほら イヤな話じゃないだろ?
彼女は君を愛してるんだ
素直に喜べよ

彼女は君を愛してるよ
彼女は君を愛してるよ
そう、彼女は君を愛してる

この歌詞についてポールはこう語っています。

ポール「”Please Please Me””From Me To You””P.S I Love You””Thank You Girl”なんかは個人的なことを歌ったんだ。
やがて間接話法を思いついた。”She Loves You (彼女は君を愛してると言ってたよ)”。曲の切り口が変わって、僕らの昔の曲や他人の曲と違う感じになった。」〜 THE BEATLES ANTHOLOGY 〜 より

今まで”僕から君”に歌っていたのを、”彼女と彼の間”に自分を置いたのです。
ポールはこの後、この手法を使った作品、またはこの手法をさらに発展さした作品を多く作ります。
オブラディ・オブラダ” は “デズモンドとモリー” の話ですし、
ロッキー・ラックーン” はその名の通り “ロッキー・ラックーン” の話です。
また”サージェント・ペパー〜” は 自分達 “THE BEATLES” を “サージェント・ペパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド” という架空のバンドに置き換えてしまうという、
間接話法の発展系のような気もします。

ただこのことについてジョンは、

ジョン「あれはポールのアイデアだよ。また”I Love You”と歌うんじゃなくて、第三者を持ってきたのさ。そういうちょっとしたことへのこだわりは、今の彼の作品に出てるね。
彼はいつも誰か他人についてストーリーを書く。僕は自分のことの方が書きたいけどね。」(1980年) 〜 THE BEATLES ANTHOLOGY 〜 より

ここにジョンとポールの大きな違いが出てますね。
実際にジョンは自分のことを強烈に歌い続けています。

でも、そんな対照的な部分を持ち合わせてる2人だからこそ、我々の興味も尽きないのかもしれません。

さて、この”She Loves You“は歌詞の面では間接話法を取り入れ、
I Love You“の世界から”She Loves You“の世界へと変化しました。

曲の面でもすごい進化が見られます。
まずはポールの発言から。

ポール「”シー・ラブズ・ユー”は、ジョンと僕と一緒に書いた。当時、ボビー・ライデルの曲がよくかかってたね。よくある話で、他の曲のことを考えながら書いてたわけ。
バンでニューキャッスルを走っている時だ。僕はもともと”かけあいの歌”を作ろうと思っててね。ふたりぐらいが”She Loves You”と歌うと別のひとりが”Yeah Yeah”と応じる。
それは安っぽいアイデアだってことになったんだけど、とにかくその時に”シー・ラブズ・ユー”という曲のアイデアはできたわけ。それで、そのあとホテルの部屋に何時間かこもって書き上げたんだ。
それをジョージ・マーティンのところに持っていって、歌を聴かせた。
“She Loves You Yeah, Yeah, Yeah, Yeah, yeeeeeaah”。最後はあの、みんなでいっせいに張り上げる6度和音さ(6度和音はジョージのアイデア—ジョージって、ジョージ・ハリスンだよ)。
するとジョージ・マーティンが言うんだ。”エンディングがひどく古くさいね。昔の歌のようだ。私なら6度で終わらせたりしない。”
でも、僕らは言ったのさ。”これだけ、いいサウンドなんだ。かまわないじゃないか。これで行こうよ。こんな最高のハーモニーは今までない”って。
彼はそうやってよく決まり事を言うんだよ。”3度は重複させちゃいけない”とか”6度で終わるのは古い。7度はもっと古くさい”とか。でも僕らはおかまいなしだった。
“僕らはこれが好きなんだ。ブルージーじゃないか”って。彼のいわゆる専門家としての決断を僕らの無知でどんどん踏みつぶしてしまう。それがよかったんだよ。
今誰かに”すばらしいソングライターの徴とは?”と訊かれたら、僕は”曲が良ければいいライターだ”って答えるね。僕らはどんなルールにも絶対耳を貸さなかった。
父はこの曲を聴いた時、言ったよ。”おまえ、ずいぶんアメリカかぶれしてるな。1回ぐらいYes,yes,yesと歌えないのかね”。僕は答えた。”わかってないな父さん、それじゃダメなんだよ。”」

まずは、ジョージ・マーティンが反対したという”6度”の音。
サビの最後(0:10〜)
She loves you, yeah, yeah, yeah“と繰り返す3回目の最後に伸ばす “yeahー” の音です。
この音はジョージ・ハリスンのアイデアなのですが、ジョージ・マーティンが古くさいと言ったわけですが、
ジョージ・ハリスンとジョージ・マーティンが同じジョージなのでややこしくて仕方がないです。
ジョージ・ハリスンはビートルズのギターリスト、ジョージ・マーティンはビートルズのプロデューサーです。

さて、その古くさいと言われた6度。
実際に鳴ってるコードで言うとG6なので、
Gの ソシレ と Gの6度の ミ で、
ソ シ レ ミ
という和音になります。
このミが古くさいって言うんです。

我々からしたら、”She Loves You“自体が1963年の歌なので、
もはやジョージ・マーティンの古くさいという感覚も良く分からないのですが、
確かに6度の音は古い感じがするって言うのも分からなくもないです。

でもビートルズは、

古かろうが新しかろうが、正しかろうが間違ってようが、”良いものは良い”

というやり方で進み続けます。
そしてそのやり方でTHE BEATLESは数々の偉業を成し遂げていきます。

この”She Loves You“のサビ。
ジョージ・マーティンが反対した6度の音以外に、もっと重要なことがあります。
私が重要だと思ってるだけかも知れませんが・・・
前作”From Me To You“のサビの”Gm7″の転調をポールは”やった”と思ったと言ってましたが、
この”She Loves You“でも新しいコード展開が出て来ます。
それがこのサビです。
この曲のサビのコード進行は2パターンあって、

(一段目は基本形は、二段目はエンディングのラスト一回)
| Em | A7 | C | G6 |
| G | A7| C | G6 |

一小節目がEmかGかという違いです。
GとEmは構成音と音階が非常に似てるので、
代理コードとして使われるものです。
なのでこの場合そこまで大きな差はないのですが、
問題はA7からCに行く流れです。

話を分かりやすくするため、曲のキーをG(ト長調)とすると、
音階は、
ソ ラ シ ド レ ミ ♯ファ ソ
となります。(ファだけシャープね)

そこへ2個目のコードA7が出て来ます。
A7の構成音は、(ラ ♯ド ミ ソ)。
ドが♯してますね。
なので音階が、
ソ ラ シ ♯ド レ ミ ♯ファ ソ
となります。
これを並べ替えると、
レ ミ ♯ファ ソ ラ シ ♯ド レ
となり、キーがD(二長調)の音階になります。
なので、コードはDに向かう力が働きます。

ここでDにいくのが”正しい”コード進行(有名なツーファイブの形)なのですが、
ビートルズは”正しくない”コード進行を使います。

Dにいくと思われたA7はCに行ったのです。
Cの構成音は、(ド ミ ソ)。
そして歌メロは(ソー♯ファーミー)なので音階は、
ソ ラ シ ド レ ミ ♯ファ ソ
これって普通のG(ト長調)の音階ですよね。

転調すると見せかけたA7は、一瞬音階を変化させただけで転調しなかったのです。

この転調しそうで転調しなかった時の音楽的なねじれ方は強烈です。
“She Loves You Yeah,yeah,yeah”と繰り返される3回目。
なんかゾクゾクしません?曲がねじられた感じ、ゾクゾクしません?

これを気持ち良いと感じるか、気持ち悪いと感じるかで、
人生を得するか損するかぐらいの差が生まれます。(大袈裟)

ビートルズの楽曲にはこういった瞬間が多く見られます。
本当にこの効果は絶大で、ビートルズがその他大勢のバンドとは違う理由の一つだと思います。
いや、理由の一つだと断言します。責任は取りませんが。

From Me To You” では”Gm7″で転調をして新たに進んだビートルズですが、
She Loves You” では”A7 → C”で転調せずに新たに進んだのです。

このアイデアの元を推測すると、
ポールは元々”かけあいの歌”を作ろうとしてました。
誰かが”She Loves You“って歌えばコーラスが”Yeah Yeah Yeah“と追いかけてくるというアイデア。
多分、これはアイデアの時点で何回か繰り返すことを想定してたと思います。
同じかけあいのメロディーを何回か繰り返して、コードチェンジしていく。
多分こう考えてたと思います。

同じメロディーを繰り返す。
そしてその繰り返すメロディーを活かすためのコード進行。
この発想から、同じメロディーを違う世界で響かすためにコードをひねったんじゃないかなって思います。

あくまで勝手な推測ですが。

長々と書かせてもらいました、”She Loves You“のサビ。
転調しそうでしなかったサビがジョージ・マーティンに反対されても押し切ったG6で終わる。
この間、たったの12秒の出来事です。

ああ、なんて刹那でなんて永いのでしょうか。
音楽の時間の不思議です。



The Beatles- She Loves You (1963 Live)

The Beatles – She Loves You (1965)_HQ

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