From Me To You

“ダダダーダダダダダァー”じゃなくて”ダララーララ ドゥンドゥン ダァー”

The Beatles From Me To You (2009 Stereo Remaster)


 

From Me To You ( Lennon / McCartney )
THE BEATLESの3枚目のシングル “From Me To You / Thank You Girl” のA面

シングルで発売された有名な曲なので、
ビートルズをそんなに知らない方でも、この曲を知ってる方多いと思います。

From Me To You“という分かりやすくてキャッチーなタイトルもいいですね。
ビートルは初期の頃、ファンのみんなが親近感を持ってもらえるように、
曲のタイトルに”Me”や”You”と言った単語を良く使用していました。
Love Me Do“”Please Please Me“”Thank You Girl“”I’ll Get You
I Want To Your Hand“”I Call Your Name“なんかがそうです。

今回の”From Me To You“も例に漏れず”Me“と”You“が入ってますね。
ただ、これは結構有名な話なんで、誰かにドヤ顔で話てもそんなにリアクションは望めないかもしれないです。

歌詞はタイトルの通り、”僕から君へ”の愛のメッセージです。

だいたいの雰囲気は(意訳です)

何か欲しいものがあったり
僕に出来ることがあれば
言ってくれればすぐに叶えてあげるよ
愛を込めて 僕から君へ

両手で君を抱きしめたいよ
そしてもう離したくないよ
君にキスして 君をずっと満たしてあげたいんだ

まあそんな感じです。

では、曲分析の方にいきたいと思います。

まず曲の最初、
“ダダダーダダダダダァー”
って歌ってると思い込んでる人が多いと思うのですが、
良く聴いてください。
“ダララーララ ドゥンドゥン ダァー”
みたいに歌ってます。
楽譜とか見ても”dadada”って書いてることが多いですし、
カラオケとかじゃ”ダダダー”か”ラララ”になってるんじゃないですかね?
(でもカラオケでダダダーダダ”ってテロップ出てるのに”ダララーララ ドゥンドゥン ダァー”って歌うのはけっこう勇気いりますよね。)

まずAメロのコード進行は(曲のキーはC or Am)、
| C | Am | C | G7 |
| F | Am |C G7|C Am|
です。

コード進行自体は特筆するほどのことはしてないのですが、
二段目の|F|Am|の時にメロディーが♭ミの音を歌います。
歌詞で言うと、
Just call me and I’ll send it a long
の”call“と”send“の音です(0:13〜)。

歌詞で言うと、
Just call me“の後の”and I’ll send it a long
の”send“の音です(0:15〜)。

call“も”send“も同じ”♭ミ“なのですが、
コードがチェンジしてるので、コードから見ると、
callの♭ミ” はFのセブンス (Fはファラド)
send”の♭ミ” はAのフラットファイブ(Aはラドミ)
となります。

セブンスの音もロックな響きがするんですが、
このフラットファイブもかなり強烈な響きをするんです。
要するにかっこいいってことが言いたいのです。
ご理解いただけましたでしょうか?
かっこいいということ。
(この♭5の音をゆっくりたっぷり溜めて使ってるのが”I Want You(She’s So Hevey)” です)

そしてサビなのですが、
サビについてポール自身がこう語っています。

ポール「僕らはいつも向上心を持っていた。少しでもいい曲を書こうとがんばった。
“フロム ミー トゥ ユー” ができた時は嬉しかったね。特にサビのコードが斬新だった。
この転調を思いついた時、やったと思ったね。」〜 THE BEATLES ANTHOLOGY 〜より

音楽的には後で書かせてもらいますが、
この曲のサビに入るところ(0:35〜)、
I’ve got arms that to“の部分で、一瞬曲がぐっと暗い感じになります。
この部分をポールは”やった”と思ったと言ってます。

では、そのポールの語る転調を見てみましょう。

この曲の頭からのコード進行を書かせてもらうと、

(キーはC or Am)
イントロ
| C | Am | C | Am |

Aメロ
| C | Am | C | G7 |
| F | Am |C G7|C (Am)|

サビ(0:34〜)
| Gm7 | C7 | F | F |
| D7 | D7 | G | Gaug |

と言った流れです。

何処がポールの言う転調かと言いますと、
サビのド頭のコード”Gm7″。
一瞬曲がぐっと暗い感じになりますよね。
(実際にポールはアンソロジーのDVDでピアノを弾きながら簡単に説明してくれてます。)

説明させていただきますと、(キーはC or Amと書いてますが、Amの話はかなり複雑になるのでCとして書かせてもらいます。)

この曲のキーはC(ハ長調)
ハ長調の音階は♯も♭もつかない”ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド”です。
ピアノの白の鍵盤ばっかりです。

Cのスリーコードは
C F Gで、全てメジャーコードです。
C = (ド ミ ソ)
F = (ファ ラ ド)
G = (ソ シ レ)
このC F Gにセブンスの音が足されることはあっても、
基本的にはメジャーコードでした。

実際にイントロとAメロに出てくるのは、
スリーコードの C F G + Am です。

そこにサビでいきなり ”Gm7” が出て来ました。
本来はGメジャーのはずなのに、Gマイナーになっています。

Gメジャーの構成音は”ソ シ レ”
Gマイナーの構成音は”ソ ♭シ レ”。

Gマイナーが出てくることによって”シ”がフラットして”♭シ”になったのです。

“ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド” が
“ド レ ミ ファ ソ ラ ♭シ ド” になったのです。

お陰で一瞬曲が暗い感じになりますね。

このシだけ♭してる音階、
“ド レ ミ ファ ソ ラ ♭シ ド” は並び替えてやると
“ファ ソ ラ ♭シ ド レ ミ ファ” となりキーがF(ヘ長調)の時の音階になります。

なので、コードはFに向かいたがります。
実際に、
|Gm7|C7| F | F |と、一度Fに落ち着きます。

と、落ち着いたと思いきやまたすぐに、
“D7″が出て来ます。

| Gm7 | C7 | F | F |
| D7(今ここの説明) | D7 | G | Gaug |

D7の構成音は”レ ♯ファ ラ ド”です。
やっとF(ファ ラ ド)になったのに、いきなり”♯ファ”が出て来ます。
そしてこのコードに対して歌メロは”ドーシ ドーレ”と歌ってます。
“シ”はフラットじゃなくて普通の”シ”です。
なので、音階は

“♯ファ ソ ラ ド レ ミ ♯ファ”となって、並び替えると
“ソ ラ シ ド レ ミ ♯ファ ソ”となって、
G(ト長調)の音階になります。
そして実際にD7の後はGになります。

そのGも次のコードでGaugとなり、
Cへの力を強めます。(これは説明しなくても感覚で分かるよね)

なので、まとめますと、

“ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド” が “Gm7” によって
“ド レ ミ ファ ソ ラ ♭シ ド” に変化して、
それは並び替えたら、
“ファ ソ ラ ♭シ ド レ ミ ファ” だからキーはFだって思ってFに行ったら次はD7が出て来て、
“♯ファ ソ ラ シ ド レ ミ ♯ファ” に変化して、
それは並び替えたら、
“ソ ラ シ ド レ ミ ♯ファ ソ” だからキーはGだって思ってGに行ったらGaugになって、
もとのCに戻りました!

ってことです。

本当に戻ってこれて良かったです。
このだらだらと説明させていただいた部分、
実際の曲では(0:35〜0:49)ということで、
わずか14秒間の出来事です。

ただその14秒間をポールは嬉しかったと語り、
多くの人が感動し、多くのアーティストがマネをし、
私のごときがこうしてブログで長々と説明している訳であります。

この”Gm7(ソ ♭シ レ ファ)”のコード。
ロックのスリーコードなら
C7(ド ミ ソ ♭シ)
F7(ファ ラ ド ♭ミ)
G7(ソ シ レ ファ)
なのだから、そもそもトニックのCの時点で♭シが出て来てるじゃないかと考える方もいらっしゃると思います。
確かにそうなのです。
このスリーコードは、”ミ”と”♭ミ” “シ”と”♭シ” が行ったり来たり、同時に存在したりしています。

そのC7の”♭シ”がCの世界を飛び越えてドミナントの”G”の世界にまで侵入してコード時代を変えてしまったのが大きな変化だと思います。

これはあくまで私の経験や知識や感覚での話です。
転調してないと感じる方もいれば、
私の理論理屈が間違えてる感じる方もいらっしゃると思います。
私も明日は違う感覚で聴くかも知れません。

あくまで今、こうだと思ってることを書かせていただきました。
今後ともその形でやらせていただきます。


The Beatles – From Me To You (Royal Variety Show ’63)

The Beatles – From me to you live HQ