This Boy

ジョージ・ハリスン 哀しきファイン・プレー

The Beatles This Boy (2009 Stereo Remaster)


 

This Boy( Lennon / McCartney )
THE BEATLESの4枚目のシングル “I Want To Hold Your Hand / This Boy” のB面
THE BEATLESのコンピレ−ションアルバム”PAST MASTERS VOL.1″の7曲目

ビートルズのコーラスワークの素晴らしさを象徴する1曲です。
また、曲の中間部のジョンのソロボーカルにやられた人間は数知れず。
私も例に漏れずその内の1人です。

レコーディングは”I Want To Hold Your Hand“と同日に行われており、
I Want To Hold Your Hand“を録り終えてから”This Boy“を録音したとのことです。

この曲のレコーディングに立ち会った、後のビートルズのエンジニア ジェフ・エメリック は著書 〜ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実〜 でこう語っています。

ジェフ「”ディス・ボーイ”はグループの新境地で、完成までにはずいぶん時間がかかった。3パートのハーモニーをフィーチャーした、かなりこみ入った曲だったので、
何度も手を加える必要があったのだ。ジョージ・マーティンはじっくりと—–ポールにもおおいにたすけられて—–そのハーモニーに磨きをかけていった。
ピアノの前に座り、ジョン、ジョージ・ハリスン、ポールの三人と個々のパートを細かくチェックしながら、”この音はこう変えたほうがいい”などとアドバイスしていく。
その間、うたわないリンゴ(彼がハーモニーに加わることは滅多になかった)はスタジオの奥にぽつんと座り、タバコを吸いながらコミック・ブックを読んでいた。」

ジェフ「”ディス・ボーイ”で印象的だったのは、三人のビートルズが、最初から最後まで、ほぼ全テイクで完璧な3パート・ハーモニーを聞かせたことだ。
複雑なハーモニー・ヴォーカルをうたいこなすジョン、ポール、ジョージの能力には、はっきりいって驚嘆させられた。単に音をはずさないだけでなく、
声をみごとにブレンドさせている。きっとかなりの時間をリハーサルに費やしたのだろう。長年、いっしょにプレイしてきた経験が、こういうかたちでみごとに実を結んだのだ。」

ビートルズがジョージ・マーティンに聴かせるまでにどれだけのハーモニーを作ってきてたかは分かりませんが、
少なくとも3声だったのは間違いないみたいです。
そこに第三者として聴ける、音楽教育を受けてる、名プロデューサーのジョージ・マーティンがいてるんですから、
ビートルズは制作チームとしても恵まれてたと言えるでしょう。
(バンドマンあるあるですが、こういう時にドラマーってけっこう居場所なかったりします。こういうタイミングでぎくしゃくしないでいれるかが、バンドを長続きさせれるかってのにもかかってきますね。)

歌詞の内容は、
This Boy = 自分
You = 君
That Boy = 君を奪っていったあいつ
といった位置づけになると思うのですが、
自分のことを”I“ではなく”This Boy“と、ちょっと距離をとった表現をしています。
She Loves You“で間接話法を取り入れましたが、ここでも歌詞と歌い手の距離を置いてる感じがします。
ただ、この”This Boy“と”That Boy“という素晴らしい表現が裏目に出て、
メンバーは歌詞がどっちかややこしくなって、リハーサルで何度も間違ってます。

Aメロのコーラスはジョージが下 ジョンが真ん中 ポールが上 の3声です。
ビートルズは基本はこの形ですね。
驚く音が鳴ってるとかではないのですが、とにかく綺麗です。
このコーラス、ライブではポールはベースを弾きながら歌ってますから、ポールの能力の高さは驚異的です。

そして中間部分のジョンのソロ。
このソロに胸撃たれた人は多かったと思います。
しかしこのパート、もともとはなかったそうなのです。

ジェフ「しかしヴォーカルのレコーディングが終わると、新たな問題が持ち上がった。ジョージ・ハリスンがオーヴァー・ダビングしたギター・ソロが、なんともさえない出来に終わったのだ。
まったくお気に召さなかったジョージ・マーティンは、代案として、ミドル・セクションにヴォーカルを入れることにした。この作戦は吉と出た。ジョンが入魂の歌を聞かせ、しかもダブルトラック用に、
その歌を完璧に再現してみせたのである。ピッチも気持ちのこめ方も、そっくり同じだった。残念ながら、その晩のうちにノーマンがほどこした編集は、いつもの彼の水準に達しておらず、とくにCDで聞くと、
ミドル・セクションを差し替えたことがはっきりわかってしまう。」〜 ザ・ビートルズ・サウンド・ 最後の真実 〜より

この発言を読み取ると、この部分はジョージ・ハリスンのさえないギターソロのお陰で、当日にレコーディング現場で足されたということになります。
その判断とそれに応えるビートルズがすごいです。
レコーディング当日にここまで大胆なことはなかなか出来るもんじゃないです。
しかもこの作戦は”吉と出た”どころか”大大吉”です。
代案として挿入されたジョンのボーカル、とんでもなく素晴らしいです。

“ダブルトラック用に、その歌を完璧に再現してみせたのである。” というのは、ダブリングとも言われる録音方法で、
まったく同じ歌を2回歌ってそれを一緒に再生することです。
まったく同じと言っても人間なので微妙なズレが起きるので、そのズレが特殊な効果を生みます。
実際にジョンのソロを聴いていただくと効果が分かってもらえると思います。
ビートルズはこのダブリングを多用していて、ビートルズファンのボーカリストはすぐにダブリングしたがる傾向があります。(私もしたがりです)

そのジョンのソロが終わってAメロに戻る瞬間。
ジェフの指摘通り、完全に別テイクを繋いでるのがわかります。
気づいてなかったら気にならずに済んだかも知れませんが、
知ってしまった以上、気になってしまいますね。
知らなかった方ごめんなさい。

This Boy“のミュージックビデオで、このジョンがソロを歌うシーン。
You Tubeでご覧頂けるのですが、、、

Oh, and this boy would be happy
Just to love you, but oh, my, oh
の”but oh, my“の”マァー ハァー ハァー“って伸ばすところ。
ミュージックビデオでジョンが”マァー ハァー“の”ハァー“でジョンが一瞬眼を大きく開けます(01:12)。
こういう仕草がジョンのかっこいいポイントですよね。

ホントにビートルズの美しいコーラスとジョンのかっこいソロが聴ける名曲です。

 

ジョージ、さえないギターをありがとう。


The Beatles – This Boy (Take 1)

The Beatles – This Boy (Ed Sullivan Show)

【 関連記事リンク 】

【 各記事へは曲名をクリック 】

PAST MASTERS VOL.1

  1. Love Me Do (Lennon/McCartney)
  2. From Me to You (Lennon/McCartney)
  3. Thank You Girl (Lennon/McCartney)
  4. She Loves You (Lennon/McCartney)
  5. I’ll Get You (Lennon/McCartney)
  6. I Want to Hold Your Hand (Lennon/McCartney)
  7. This Boy (Lennon/McCartney)
  8. Komm, gib mir deine Hand (Lennon/McCartney)
  9. Sie liebt dich (Lennon/McCartney)
  10. Long Tall Sally (Enotris Johnson,Robert Blackwell,Richard Penniman)
  11. I Call Your Name (Lennon/McCartney)
  12. Slow Down (Larry Williams)
  13. Matchbox (Carl Perkins)
  14. I Feel Fine (Lennon/McCartney)
  15. She’s a Woman (Lennon/McCartney)
  16. Bad Boy (Larry Williams)
  17. Yes It Is (Lennon/McCartney)
  18. I’m Down (Lennon/McCartney)

3 thoughts on “This Boy

  1. Pingback: I Feel Fine | THE BEATLES ビートルズ入門 考察 分析

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