I’ll Be Back

自分たちの到達点を刻み込んだ楽曲

The Beatles – I’ll Be Back (2009 Stereo Remaster)

I’ll Be Back (Lennon/McCartney)
THE BEATLESの3枚目のアルバム “A HARD DAY’S NIGHT”の13曲目

以下 〜 wikipedia 〜 より
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本作は1964年に発表されたイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』の終曲である。レノン=マッカートニーの作品。実質的にはジョンの作品とされる。ただしポールは自伝「メニー・イヤーズ・フロム・ナウ」の中で共作であると主張している。
リード・ヴォーカルはジョンがとり、ポールがバックを受け持っている。ジョンとジョージは、アコースティック・ギターを弾いている。
歌詞の内容などを一見すると、恋人に当てた曲のようだが、本当は、1964年に長らく行方不明だった父アルフレッドと再会したことをきっかけにして、父親のことを書いた曲である。
マイナーコードとメジャーコードが混在するこの曲の構成を、デル・シャノンの曲『悲しき街角(Runaway)』から自分流に手を加えたとされる。1980年にジョン・レノンは「まったくぼく。デル・シャノンの曲のコードをぼく流に手を加えた。ポールも同じ事をやった。ぼくの方がこの I’LL BE BACK」と語っている[1]。
本作は当初は3拍子だったが、すぐに現在の4拍子に変更された。3拍子のテイクはザ・ビートルズ・アンソロジー1の2枚目第17トラックに収録されている。

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ジョンがリード・ボーカルを担当してるので、ジョン主導であったことは間違いないと思いますが、
どこかの部分はまるまるポールが作ったりしたのでしょうか?

歌詞の面でジョンは、行方不明だった父との再会をきっかけに書いたと語っています。
ジョンが幼少期の頃、父はジョンの面倒も見ずに何処かへ行ってしまい、
母も別の男と暮らしはじめたので、ジョンは伯母さんの家で育てられました。
そしてジョンがTHE BEATLESで有名になったのを良いことに、長年行方不明だった父親が名乗り出て来たのです。

ジョンは最初会うことを拒否してたのですが、結局折れて会ったそうです。
(父がマスコミを使ってジョンに会うように迫った経緯もあるそうです)

そんなことをきっかけに書いたという歌詞の内容は、

もし僕を傷つけるようなら 僕は行くよ
でも どうせ戻ってきてしまうんだろうな
だって前にも一度さよならを告げたのに
僕は戻ってきてしまったから

ほんとに愛してるんだ
君を求めてるんだ
そう、僕は君を求めてるんだ

僕の心をまた傷つけたりするんじゃなくて
もっと他にやるべきことがあるはずだよ
今度ばかりは僕だって本気なんだってこと
見せてみせるよ

僕が君から離れれば
君だって僕が必要なんだってことを分かってもらえると思ってた
でもそれは全くの間違いだったんだ

僕の心をまた傷つけたりするんじゃなくて
もっと他にやるべきことがあるはずだよ
今度ばかりは僕だって本気なんだってこと
見せてみせるよ

僕はもう行きたいんだ
でも君と離れたくない
そう 君と別れたくないんだ

もし僕を傷つけるようなら 僕は行くよ
でも どうせ戻ってきてしまうんだろうな

意訳ですが、こういった内容です。

ジョンのイメージってこんなナイーブな感じではないですよね。
一般的にはもっとタフで皮肉屋で悪いヤツって感じなんですけど、
ひょっとしたら人一倍ナイーブだったのかもしれないですね。

さて曲の方は、ジョンが種明かししてるように、デル・シャノンの”悲しき街角 (Runaway)”の影響がもろに出ています。
Aメロのコード進行、Am→G→F→Eの流れは全く一緒ですね。(“悲しき街角 (Runaway)”の方が半音キーが高いです)

デル・シャノン(Del Shannon)/悲しき街角 Runaway

ただ、wikipediaにもあるように、この曲はメジャーとマイナーが混在しています。
ジョンがパクッたのは(言い方悪い?)コード進行よりも、このメジャーとマイナーの混在の方だったと思います。
そして”ポールも同じことをやった”というのは、同アルバム収録の”Things We Said Today“のことなのかな?って思います。

悲しき街角 (Runaway)“、”I’ll Be Back“、”Things We Said Today“、
この3曲の共通点は、同じキーのメジャー調とマイナー調が混在するということです。
中でも”I’ll Be Back“は目まぐるしくメジャーとマイナーが入れ替わります。

そしてこの”I’ll Be Back“では、メジャーマイナーの混在の他に、
And I Love Her“で行われた、”一つのフレーズに対してコードを変える”という手法の進化系が見られる気もします。
And I Love Her“ではイントロフレーズに対して3パターンのコード進行が使われていました。
大雑把に言いますと、暗い進行、明るい進行、さらに明るい進行みたいな感じです。

I’ll Be Back“では同じフレーズに対して2パターンのコードが使われています。
そのコードとは”A”と”Am”、メジャーとマイナーの混在です。

では、まず音階とコードとを見ていきましょう。
この曲はAメジャーの世界とAマイナーの世界が混在します。
今回はマイナー側の話もあるので、ちょっと説明が長くなってしまいます。

イントロからAメロ終わりまでのコード進行

イントロ
| A | A |

Aメロ
| Am | G | F | E |
| A | A |
| Am | G | F | E |
| A | A |

ご覧の通り、”A”と”Am”が当たり前のように行ったり来たりしています。

Aメジャー = (ラ シ ♯ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ)
(Ⅰ)A = (ラ ♯ド ミ)
(Ⅳ)D = (レ ♯ファ ラ)
(Ⅴ)E = (ミ ♯ソ シ)

Aマイナー = (ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ)
(Ⅰm)Am = (ラ ド ミ)
(Ⅳm)Dm = (レ ファ ラ)
(Ⅴm)Em = (ミ ソ シ)

これが基本なのですが、マイナーの世界はもう少し奥が深くて、
マイナーの中にも大きく分けて3種類の音階があります。

・ナチュラルマイナースケール
・ハーモニックマイナースケール
・メロディックマイナースケール

なんて言ったりもするのですが、
その3つは何が違うかと言いますと、

音階には”導音”というのがあるとされてて、それは主音に向かう音とされてるのですが、
その音は主音の半音下の音とされています。
“ラ”の音が主音の場合は”♯ソ”の音が導音です。
“♯ソ”の音は”ラ”に向かいたがるってことです。

しかしAマイナーには”♯ソ”の音は出て来ません。
出て来ないんだったら”ソ”の音を”♯ソ”にして導音にしちゃおうよ!ってなことで、
(ラ シ ド レ ミ ファ ♯ソ ラ) もオッケー!ってしたんです。

でもそうすると、”ファ”と”♯ソ”の間だけ広くなっちゃったね。ってことで、
じゃあ、”ファ”も半音上げて”♯ファ”にしちゃおうよ!そもそも”ミ”と”ファ”の間は半音階だったしさー。ってなことで、
(ラ シ ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ) もオッケー!ってしたんです。

これらをまとめると、
・Aナチュラルマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ)
・Aハーモニックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ファ ♯ソ ラ)
・Aメロディックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ)

この3つが存在することになりました。

このスケールに照らし合わせてコードを考えると、

Aナチュラルマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ファ ソ ラ)
(Ⅰm)Am = (ラ ド ミ)
(Ⅳm)Dm = (レ ファ ラ)
(Ⅴm)Em = (ミ ソ シ)

代理コードも記しておきます。
〈Dm(レ ファ ラ)の代理コード〉 (Ⅵ♭)F = (ファ ラ ド)
〈Em(ミ ソ シ)の代理コード〉 (Ⅶ♭)G = (ソ シ レ)

Aハーモニックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ファ ♯ソ ラ)
(Ⅰm)Am = (ラ ド ミ)
(Ⅳm)Dm = (レ ファ ラ)
(Ⅴ)E = (ミ ♯ソ シ)

Aメロディックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ)
(Ⅰm)Am = (ラ ド ミ)
(Ⅳ)D = (レ ♯ファ ラ)
(Ⅴ)E = (ミ ♯ソ シ)

Aマイナーの世界に、Aメジャーのスリーコードの”D”と”E”が出て来ましたね。
また、代理コードとして”F”と”G”が出て来ました。
これでイントロ、Aメロに出てくる全てのコードが出揃いました。

さて、このコードにのっかるメロディーなのですが、
まずイントロ。
And I Love Her“同様に、ギターのフレーズからはじまります。

コード”A = ラ ♯ド ミ”に対して、”♯ファ シ ミ ♯ドーーー”というギターフレーズです。
これを二回繰り返すのですが、二回目の最後はAメロの頭に食い込んでいます。
Aメロの頭のコードは”Am = ラ ド ミ”に変化するのでメロディーも”♯ファ シ ミ ドーー”と”♯ド”が”ド”になっています。
イントロからAメロのわずかな時間で、
同じフレーズのメジャーとマイナーのメロディーが出て来ました。

そして歌は”Am”からはじまります。
You Know〜 (0:04〜)

| Am | G | F | E |
| A | A |

2,3小節目の”G””F”の時はAナチュラルマイナースケールと思われるのですが、
4小節目に”E”が出て来ます。
E= (ミ ♯ソ シ)なので、導音の”♯ソ”が入っています。
ということは、
Aハーモニックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ファ ♯ソ ラ) か、
Aメロディックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ) なのですが、
メロディーに”♯ファ”が出てきます。
I’ll be back again“の”back“の音です。
なのでここは、Aメロディックマイナースケール = (ラ シ ド レ ミ ♯ファ ♯ソ ラ)と考えられるでしょう。

そしてその”E”の次のコードはAマイナーではなくてAメジャーです。
確かにAメジャーの世界から見たら”E”はドミナント(Ⅴ)です。
でも歌はマイナーからはじまりました。
最後はメジャーで終わります。
ってことは、このドミナントの”E”を使ってメジャーに転調したんだな。
って思うとすぐにもう一回Aメロがあって、またAマイナーからはじまります。
もう一度コード進行を見ておきましょう。

イントロ
| A | A |

Aメロ
| Am | G | F | E |
| A | A |
| Am | G | F | E |
| A | A |

“A → Am”
“E → A”
という動きが見れますね。

さて、この後でBメロなのですが、
Bメロの最後からまたAメロに戻る時、
“E → Am”の動きが出て来ます。
(0:34〜)”Yes I’m the one who want’s you ohーohーoh–You“の最後の部分
ohーohーoh–You“のところです。(0:38辺り)
ここのコードは、
|E D|E D|E| Am |

Aメロでは”E→A”だったのが、ここでは”E→Am”となっています。
Eはどちらにも機能しているということがはっきりと表れています。
飛躍した言い方をしますと、要するに、

 

Eの後はAでもAmでも好きな方に行ってよし!

 

ってことです。

そしてもう一つ書いて置きたいことがあります。
I’ll Be Back“と”Things We Said Today“で行った、
同じキーのメジャーとマイナーを行き来する。
この時期のジョンとポールはメジャーとマイナーの混在を確実に意識していました。
そしてそれに対して一つの答えを出したんだと思います。
それをこの”I’ll Be Back“のエンディングにしっかりと刻み込んでると思います。

それはイントロフレーズでも出て来た、
AメジャーとAマイナーの変化。
“♯ファ シ ミ ♯ドー”と”♯ファ シ ミ ドー”の変化。

この変化のことなのですが、
ただ、イントロと間奏では、AメジャーからAマイナーに移る流れしかしていませんでした。
マイナーの世界からメジャーの世界へは”E”を経由していました。
しかしアウトロでは何も経由せずに、AメジャーとAマイナーが交互に出て来て、そのままフェードアウトします。

A→Am→A→Amに対してメロディーも
“♯ファ シ ミ ♯ドー””♯ファ シ ミ ドー””♯ファ シ ミ ♯ドー””♯ファ シ ミ ドー”
と変化して繰り返します。

まるで自分たちのやろうとしたことを確認するかのように、到達点を示すかのように、
また、種明かしをするかのように、同じキーのメジャーとマイナーのコードを交互に奏でています。

それでなくてもセブンスがいっぱいついたロックは複雑な音楽でした。
スリーコードだけでも音階が目まぐるしく入れ替わります。
そこへ、同じキーのメジャーとマイナーのどちらの世界も混在することになったのです。
マイナーは音階が3種類。
メジャーのスリーコード、代理コード、
マイナーの3種類の音階のスリーコード、代理コード、
これだけでも膨大な組み合わせになるところへ、転調でもした日にゃあとんでもないことになります。
そこへリズムとメロディーと歌詞と音色と・・・
となると音楽は無限大ですね。

そんなことを私に教えてくれたのも、
ビートルズでございました。


I’ll Be Back (Demo), I’ll Be Back (Complete) // Anthology 1 // Disc 2 // Tracks 17 & 18 (Stereo)

【 関連記事リンク 】

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  1. A Hard Day’s Night (Lennon / McCartney)
  2. I Should Have Known Better (Lennon / McCartney)
  3. If I Fell (Lennon / McCartney)
  4. I’m Happy Just to Dance with You (Lennon / McCartney)
  5. And I Love Her (Lennon / McCartney)
  6. Tell Me Why (Lennon / McCartney)
  7. Can’t Buy Me Love (Lennon / McCartney)
  8. Any Time at All (Lennon / McCartney)
  9. I’ll Cry Instead (Lennon / McCartney)
  10. Things We Said Today (Lennon / McCartney)
  11. When I Get Home (Lennon / McCartney)
  12. You Can’t Do That (Lennon / McCartney)
  13. I’ll Be Back (Lennon / McCartney)