If I Fell

ジョン「本格的バラードへの初の試み」

The Beatles – “If I Fell”

 

If I Fell (Lennon/McCartney)
THE BEATLESの3枚目のアルバム “A HARD DAY’S NIGHT”の3曲目

If I Fell” 邦題は “恋におちたら“。
ジョンが主に作り、ポールも手助けしたとされる”If I Fell“は、ボーカルはジョンとポールの有名な2声です(最初と途中少しだけジョンのダブル・トラック)。

ジョンは「本格的バラードへの初の試み」と語っています。
また、この曲のポールの独特で美しいコーラスについてプロデューサーのジョージ・マーティンは、「ポールが独自に身につけた才能 — “イエス・イット・イズ”とかね」とコメントしています。
ポールも「ハーモニーに凝っている時期だった」と語っていて、初めて本格的バラードに挑戦したジョンとハーモニーに凝っていたポールが見事に融合しています。

歌詞の内容は邦題にもある通り(意訳です)、

もし僕が君と恋におちたら
裏切ったりしないって約束してくれるかい?
そして教えてくれるかい
前にも恋をしたことはあるけど
もう分かってるんだ
手を握るだけが恋じゃないってことが

もし僕がこの心を君に捧げるのなら
君が彼女よりも僕を愛してくれるのか
最初に確かめておかなくちゃいけないんだ

もし僕が君を信じるようになったら
逃げたり隠れたりしないで
もし僕も君を愛するようになったら
彼女みたいに僕のプライドを傷つけたりしないで

だってもうあんな苦しみには耐えられないよ
僕らの恋が実らずに また想いをするなんて

だからわかってほしいんだ
僕だって君を愛したいんだってこと
そして彼女が僕たちのことをを知ったら泣いてしまうことも

もし僕が君と恋をしたなら

ってな感じです。

ジョンの初期の歌詞には”大切な人を失う”ことへの恐れみたいなものを良く感じます。
その理由をあまり簡単にまとめたくはないですけど。。。

で、この曲は歌い出しの最初のコード進行を、多くの方が不思議なコード進行だと感じられてると思います。
多くの本やネット上の解説なんかを拝見しても、未だちゃんと解説してくれてる方がいらっしゃらなかったです。
少なくとも私は見つけられなかったです。
大抵の方が”ジョンのテキトーな思いつき””強引な転調”なんて言葉で片付けています。(堂々とそんなことを書いた本が売られてます)
本当にそうなのでしょうか?

私が絶対に正しいとは言いませんが、ただのテキトーな思いつきでこんな美しい響きになるのでしょうか?
強引な転調であそこまで美しい曲になるのでしょうか?
ビートルズで少し変わったコード進行が出てくると、すぐに”ジョンのいつものテキトーな思いつき”のような片付けられ方をします。
I am the Warlus“なんかもそうですね。

実際に”If I Fell“の出だしのアイデアを出したのがジョンなのかポールなのかは分かりませんが、
And I Love Her“で行った”半音転調”がここでも行われています。
このアイデアがジョンなのかポールなのか、”And I Love Her“と”If I Fell“のどちらが先に頭にあったのか、
厳密には分かりませんが、当時の二人の中に”半音転調”が頭にあったのは間違いないと思います。

そしてその半音転調のやり方、ポイントがすごく似ています。
ただ言うなれば、”And I Love Her“は裸の転調で”If I Fell“は着飾った転調って感じでしょうか?

さて、、、
そういったワケで、大風呂敷を広げてしまって後悔してるのですが、
音楽的な分析を。

これはあくまで個人的な見解で私は独学なので、クラシックやジャズの世界からしたら間違ってるかもしれません。
ただ私はそんなことはどうでもいいので、あくまでシンガーソングライターとしてビートルズの意識を探ってるだけなので。

まず最初に”If I Fell“の出だしからAメロへのコード進行を見てみましょう。

(出だし)〜If I fell in love with you
| E♭m | D | D♭ | B♭m |
| E♭m | D | Em7 | A7 |

(Aメロ)〜If I give my heart to you
| D Em | F♯m Fdim| Em7 | A7 |

って感じです。

やはりなんか不思議なコード進行ですね。
しかも出だしがフラットがいっぱいで、半音階でコードが変わるのでややこしいです。
なので最初にどういうことが行われているのかを、大雑把にまとめると、

“D♭からDに半音転調してます。”
“その転調は7小節目のEm7で行われます”
“歌い出しの”E♭m”は”キーD♭”からみたら二度マイナー(Ⅱm)です”
“転調が行われる”Em7″は”キーD”から見たら二度マイナー(Ⅱm)です”

ということです。
もう少し突っ込んで一小節ずつ説明すると、

【 転調前のキーはD♭ 】
キーD♭のスリーコードは、
(Ⅰ)D♭ = (♭レ ファ ♭ラ)
(Ⅳ)G♭ = (♭ソ ♭シ ♭レ)
(Ⅴ)A♭ = (♭ラ ド ♭ミ)

【 転調前に出てくる他のコード 】
(Ⅱm)E♭m = (♭ミ ♭ソ ♭シ)
(♭Ⅱ)D = (レ ♭ソ(♯ファ) ラ )
(Ⅵm)B♭m = (♭シ ♭レ ファ)

【 転調後のキーはD 】
キーDのスリーコードは、
(Ⅰ)D = (レ ♯ファ ラ)
(Ⅳ)G = (ソ シ レ)
(Ⅴ)A = (ラ ♯ド ミ)

【 転調後に出てくる他のコード 】
(Ⅱm)Em = (ミ ソ シ)

| E♭m | D | D♭ | B♭m |
| E♭m | D | Em7 | A7 | D |

1、”いきなりE♭m(Ⅱm)から歌いはじめます”
2、”次の”D”は”A♭の裏コード(裏ドミナント)”と解釈します”
3、”トニックのD♭です”
4、”トニックのD♭の代理コードのB♭mです”
5、”また最初のE♭m(Ⅱm)に戻りました”
6、”また”A♭の裏コード(裏ドミナント)”の”D”が出て来ましたが、転調後の主音になるDです”
7、”転調後の主音から見た(Ⅱm)のEm7です。このコードで転調スタートです。”
8、”転調後の主音から見たドミナント(Ⅴ)のA7です”
9、”完全に転調しました。新たな主音のDです。”

2小節目の”D”のことを”A♭の裏コード(裏ドミナント)”と書きましたが、
本当に裏コードなら”D7″になるのですが、ビートルズはセブンスの音は鳴らしてません。
あくまで解釈としてです。
(※ 裏コード(裏ドミナント)とは、そのコードと増4度の関係にあるセブンスコードで、ドミナントの代理として使えるとされる)

そしてその”D”は転調後のキーになるのですが、
6小節目のDから9小節目(Aメロ頭)までのDのコード進行を見ると、
|D|Em7|A7|D|
と、ツーファイブの形になっています。

Dは合計3回出て来ます。
1回目(2小節目) = “A♭の裏コード(裏ドミナント)”
2回目(6小節目) = “A♭の裏コード(裏ドミナント)” + 転調後のトニック
3回目(9小節目) = 転調後のトニック

3回ともそれぞれ違う機能をしているのです。

また、この1回目のD=”A♭の裏コード(裏ドミナント)”から見えてくるのは、
出だしの| E♭m | D | D♭ |の部分は機能的にはツーファイブの展開系だということ。
要するに、出だしは裏コードを使ったツーファイブ、転調は表のツーファイブを使った転調。
と、ツーファイブの複合技で、この短い時間の中で半音転調を行っているのではないでしょうか?

そして、
・ 半音転調すること。
・ 歌い出しが二度マイナーであること。
・ 転調そのものを転調後の二度マイナーでやること。
これらの点が”And I Love Her“と共通して見られるポイントです。

ただ”And I Love Her“は間奏に入る瞬間に大胆に転調しました。
この”If I Fell“ではほんのわずかな時間に、オシャレに着飾って転調しました。

と、私はこういう風に解釈しております。

これが間違ってたらごめんなさい。
でも、もしこれが間違いだって感じる方は、ご自身の解釈をお持ちだと思います。
それこそが大事で、”ジョンのいつもの思いつき””テキトーなコード進行”といった解釈で済ませるのはどうかと思います。
これだけ成功したバンド、後の音楽にこれだけ影響を与えたバンドのこれだけ人気のある曲が、ただの思いつきで片付けられるものなんでしょうか?
万が一、作者がただの思いつきで作ってたとしても、そこには必ず何かがあると私は考えています。

私は正しい理論なんて知りませんし、別にどうだっていいと思ってます。
ただ、そこにある音がどこに向かおうとしてるか、エネルギーの方向性、またそのねじれ方、揺らぎ方、機能性、
そういったものを感じ、独自の理論を作っていくのは大事なことだと考えています。

さて、そんなわけで”If I Fell“の出だしの転調について書かせていただきましたが、
また今度、”If I Fell“と”And I Love Her“の共通点を、もう少し詳しくご紹介できたらな、と思います。
そこまで細かいことに需要があるかは分かりませんが 笑

今回はこの辺で。。。

映画”A HARD DAY’S NIGHT”より 1:15〜 辺りでジョージ・ハリスンがアンプ倒します
A Hard Day’s Night (4/10) Movie CLIP – If I Fell (1964) HD


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  1. A Hard Day’s Night (Lennon / McCartney)
  2. I Should Have Known Better (Lennon / McCartney)
  3. If I Fell (Lennon / McCartney)
  4. I’m Happy Just to Dance with You (Lennon / McCartney)
  5. And I Love Her (Lennon / McCartney)
  6. Tell Me Why (Lennon / McCartney)
  7. Can’t Buy Me Love (Lennon / McCartney)
  8. Any Time at All (Lennon / McCartney)
  9. I’ll Cry Instead (Lennon / McCartney)
  10. Things We Said Today (Lennon / McCartney)
  11. When I Get Home (Lennon / McCartney)
  12. You Can’t Do That (Lennon / McCartney)
  13. I’ll Be Back (Lennon / McCartney)



8 thoughts on “If I Fell

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  8. はじめまして。通りすがりの者です。突然すみません。
    こういう記事大好きです。「レコーディング・セッション」などを読んでも分かるように,この頃はジョンやポールが新しいサウンドを求めていろいろなコードを試していた時期ですよね(有名なのが別記事で取り上げられているA Hard Day’s Night のイントロのコード)。決して”ジョンのいつもの思いつき””テキトーなコード進行”なんて言って欲しくないものですね。

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